NEAC_M4

1975年、大学に入った年、私は大学のコンピューターのクラブに入った。きっかけは何だったのかハッキリと思い出せないが高校時代に読売系の専門学校のコンピューター入門みたいな1日講座を受講したことがあった。その記憶が私をコンピューターにいざなったのかもしれない。

大学のコンピューターのクラブはMISという名称だった。MISは当時コンピューターが目指していたマネージメント・インフォメーション・システムの略だ。そのクラブの顧問をしていた先生のコネで私たちはNECのミニコン(ミニコンピューターを当時はミニコンと呼んだ)であるNEAC M4に触れることができた。NEAC M4からは多くのことを学んだ。

ブートストラップ

当時のコンピューターは電気を切るとメモリーの内容は全部きえてしまう。つまりマッサラになってしまうのである。その状態で電気を入れても何も起こらない。今のようにROMなどというものは無い。最初に動かすプログラムは手で入力する。しかも16進数で入力していくのだ。NEACの表パネルには8個のボタンが並んでいる。

そのボタンを1バイトつまり8ビットのデーターとみなしてプログラムを打ち込むのだ。大抵の場合は二人で作業する。一人が16進数を読み上げ、もう一人がパネルからその値を入力する。このようにしてイニシャルプログラムローダーというPTR(パンチテープリーダー)からプログラムを読み込むためのコードを入力するのだ。この一番最初のコード入力をブートストラップと言う。一か所でも間違うとNGだ。だから何度もやりなおすことになる。やり直しながら自然と16進数が得意になるというものだった。

PRT

当時世界を席巻していたビジネス用通信技術はTTY(テレタイプライター)だ。TTYは電話回線を通じてせかいの2台のタイプライターを接続する方法だ。日本のA社のテレタイプ装置を電話回線を通じて米国のB社のテレタイプに接続する。A社のタイプライターのキーを押すと、B社のタイプライターも同じ文字を印字する。このような機能を持つ優れモノだった。

国際回線はとても高価だった。ちょっと繋ぐだけでもとても個人が払える金額ではなかった。タイプライターを国際回線で繋いだ状態を可能な限り短時間にするために、TTYにはPTP(ペーパーテープパンチャー)とPTR(ペーパーテープリーダー)がついていた。事前にB社に送る電文をPTPを使ってペーパーテープに穿孔しておく。電話回線が繋がったら、穿孔されたテープをPTRにかける。するとTTYはPTRの内容を自動演奏する。ピアノの自動演奏とほぼ同じ感じだ。その内容は国際回線を通じて米国のB社のTTYにもタイプされるというわけだ。

ASCIIコード

TTYは元々は6ビットで大文字だけだったが、ビットを1個追加して拡張されていた。そのため、一般のPTPやPTRはテープに8個の穴が並んでいた。8個の穴のうち7個を文字コードとして使い、最後の1個をイーブンパリティ(偶数パリティ)として利用してた。この7個の穴で文字を表したのがASCIIコードだ。だからASCIIコードは7ビットしかない。8ビット目はパリティだったからだ。

QUICK BROWN FOX

TTYで文字を送るとき、相手のTTYにすべての文字がちゃんと送信できるか確認する必要があった。当時のTTYはソレノイド(磁石)を使って物理的にタイプボールなどを動かしていたので磁石が全部動くか確認する必要があた。そこで使われる一般的な文章があの有名なTHE QUICK BROWN FOX JUMPS OVER THE LAZY DOG.だ。この文章にはアルファベットのA-Zのすべての文字が含まれている